心の起源―生物学からの挑戦 木下 清一郎

2007/11/03 [土] 19:41 このエントリーを含むはてなブックマーク
心の起源―生物学からの挑戦 中公新書  木下 清一郎 (著)
HD蔵出し第二弾。私の大好きな認知論、認識論とも関係深い。
                                            
 最初に本の内容について概要を述べる。副題に「生物学からの挑戦」とあるように、生物学の視点から「心」に迫っている本である。といっても、単に心に焦点を当てているのではなく、もっとスケールの大きな視点から「心」を位置付けている。そして、「心の世界を超える世界」まで展望することを試みている 。
 まず著者は、世界を「物質世界」「生物世界」「心の世界」の3つに分けている。そして、物質世界から生物世界を開いたのが、核酸の「自己複製」だと位置付け、生物世界から心の世界を開いたのは「記憶」だと仮説を立てている。
「記憶を持つことで過去と現在の照合が可能となり、それまで瞬間のみを生きてきた生物が時間と空間を獲得した」と心のはじまりを解説し、さらに、感情、意志の自由のはじまりまで解き明かしていく。
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 「心の世界」というものは「物質世界」から「生物世界」が派生したように「生物世界」から派生したものである。「物質世界」に対する「生物世界」と同様に、構造的には「生物世界」に対して入れ子になっていながら、別次元に対して開かれている。この入れ子世界の派生の契機になったのが生物における「記憶」の発生だというのである(ちなみに「物質世界」から「生物世界」が派生した契機は「自己複製能力を持つタンパク質の出現」である)。
 
 すなわち生物において「記憶」が成立したために初めて「時間」が生まれ、時間が認識されて初めて「空間」が認知される。こうして「時空」が誕生する。するとそれを場として情報の蓄積と照合により適・不適の判断が可能になって「論理」が産まれる。しかしこうして出来た「論理」は「心」の下部構造である「生物世界」の原理である本能行動を阻害する可能性がある。そこで「論理」が生存や種の存続に関わる結果を引き起こす危険を回避すべく、本能行動の実現に快感という報酬を与える仕組みが成立、これが「感情」となったとするのである。
 
 これで「心」という世界には論理による「適・不適」の軸と感情による「快・不快」の軸で出来ている平面が出現した。表象(この本では心が扱っている「神経系によって抽象化された情報」をこう呼んでいるのだが)はまずこの平面上に配置され、後から入って来る表象と照合され相互に干渉し新たな次元を獲得して再配置される。この次元を自己回帰と定義して論理のX軸、感情のY軸に加えていわばZ軸を形成し心はより複雑になると考えられる。逆の見方をすれば、貧弱な「心」はこのZ軸が短く平面に近いわけである。

 あまり関係ないのかもしれないが、私がこの本を読んで思い出したのが、「カクテルパーティ効果」である。パーティでがやがや騒がしい所でも、自分にとって親しい人の声はすぐに聞き分けられる現象をいう。これは、脳が自動的に、大切な信号をフレームアップして、あるいは他の信号を遮断してしまって、たくさんある感覚情報の一部を選んでいるのである。私たちが普段目で見ている情報は、光の刺激をしてまず目の網膜に入る。網膜には、一億数千万個もの細胞が並んでおり、光はそこにあたって、電気の信号に変換される。その情報は視神経を通って、外側膝状体というところで中継されて後頭葉にとどく。私たちは視覚情報が最初に大脳新皮質に到着するのは、後頭葉の視覚野と呼ばれる所である。それから予備校で習ったある先生の言葉、「僕が死ねば、世界は終わる。」この言葉が意味するのは、世界の支配者が「僕」だということではもちろんなくて、私たちがとらえる世界は、脳が知覚し、脳が束ねた結果だということである。世界は、私たち一人一人の脳が作った、個性的な世界であるのだから。
 
 それからこれはわたしの個人的見解で話が脱線するが、はしがきにある「心をたずねるものが心自身であってみれば、それは当然のことかもしれない。」という箇所に心引かれた。これは、脳科学でよく言われる「脳が脳を研究する」というパラドックスに通ずるものがあって、知的好奇心を刺激された。


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 コメント


 こんばんは。コメント、ありがとうございました。この本は、面白そうな内容ですね。
生物学の視点から「心」に迫るのですか。新書で読みやすそうなので、本を読むのが苦手な僕でも、なんとかなりそうです。
 早速、直リンできるようにしました。まだあちらのブログには慣れていませんが、徐々に
記事を増やしていくつもりです。まぁ、どうでもいい内容も多いですが…。
Posted by:ノムさん  at 2007/11/03 [土] 21:23


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