無銭優雅 山田詠美
『無銭優雅』 山田詠美 *再録、書き足し。
出版社 / 著者からの内容紹介
大人になりそこねた男と女は、名作に導かれて、世にも真摯な三文小説を織り上げる。いつか死ぬのは知っていた。けれど、死ぬまでは生きているのだ。ささやかな日々の積み重ねが、こすり合わされて灯をともし、その人の生涯を照らす。そして、照り返しで死を確認した時、満ち足りた気持で、生に飽きることが出来る。私は、死を思いながら、死ぬまで、生きて行く。今わの際に、御馳走さま、とひと言、呟くために――。
相変わらず、素晴らしい書き出し。もうここだけでご飯何杯もいけます。詠美さんの小説の冒頭は、日本語の美しさを誇りに思わせてくれる。風味絶佳に続いて4文字熟語のタイトル。これは詠美さんの造語でしょうか。風味絶佳を書いたことで得た何かを感じる。『風味絶佳』という作品がなかったら、この作品もなかったのかも知れない。なんて勝手に推測。
「大人になったら何になろう」なんて大人なのについつい思ってしまう人種のための物語。山田詠美さんの最近の作品では「大人になりきれない、やんちゃな大人」がよく出てくる。そして「死」という陰がちらつく。この人は本当の死の恐怖というものを知っているのだろう。
臆面もない二人の恋愛小説。二人は仲良しで、お互いの長所を褒め合い、甘やかし合う。欠点を長所になるまでお互いを愛でる。栄は極度の乗り物酔いで3駅もたない。自転車でしか移動できない。中央線を出れない。行きつけのバーは西荻窪、慈雨の花屋も吉祥寺、三鷹で進行していく。コピーの通り「恋は中央線でしろ!!」決してお洒落ではない、子供帰りのようなキュートな恋。なんていうかVIVA!40代!と言う言葉がぴったり来る。ベッドタイムアイズのような緊迫した密度の濃い世界ではなく、ちょっと肩の力を抜いた柔らかな感じがする。いつからか、多分『A2Z』の頃からだと思うけど、詠美さんの作品は丸みを帯びてきたような気がする。
ところどころ古今東西の恋愛小説から山田詠美選の名文が引用されている。その引用が慈雨と栄の物語と韻を踏んでいるのだ。山田詠美の審美眼と批評性が技巧を凝らして、いかんなく発揮されている。
栄は犬、猫にもなめられてしまうタイプの天然記念物級の穏やかで優しい人物だが、最後クライマックスで大爆発する。ぐっと来ます。
しょんぼりしがちな大人に「私はあなた達をしょんぼりさせませんよ」と言い放ってくれる山田詠美節の利いた作品です。
TB:螺子を巻く。さん
juice78さん
| 無銭優雅 | |
![]() | 山田 詠美 幻冬舎 2007-01-31 売り上げランキング : 24605 おすすめ平均 ![]() この一貫性! 共感と反発が綯い交ぜになった複雑な読後感 湘南ダディは読みました。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
出版社 / 著者からの内容紹介
大人になりそこねた男と女は、名作に導かれて、世にも真摯な三文小説を織り上げる。いつか死ぬのは知っていた。けれど、死ぬまでは生きているのだ。ささやかな日々の積み重ねが、こすり合わされて灯をともし、その人の生涯を照らす。そして、照り返しで死を確認した時、満ち足りた気持で、生に飽きることが出来る。私は、死を思いながら、死ぬまで、生きて行く。今わの際に、御馳走さま、とひと言、呟くために――。
ミーミーと言って、体を摺り寄せてくるのは猫ではないのである。それは霊長類人科のオスで御年45歳。世の中ではおじさんという年ではあるが、私にはそう受け止めることが出来ない。それは私自身も同じ年齢だからであろう。周りの見えていない時の私たちは未だ少年少女。ずうずうしいなんてこれっぽちも思わない。
相変わらず、素晴らしい書き出し。もうここだけでご飯何杯もいけます。詠美さんの小説の冒頭は、日本語の美しさを誇りに思わせてくれる。風味絶佳に続いて4文字熟語のタイトル。これは詠美さんの造語でしょうか。風味絶佳を書いたことで得た何かを感じる。『風味絶佳』という作品がなかったら、この作品もなかったのかも知れない。なんて勝手に推測。
「大人になったら何になろう」なんて大人なのについつい思ってしまう人種のための物語。山田詠美さんの最近の作品では「大人になりきれない、やんちゃな大人」がよく出てくる。そして「死」という陰がちらつく。この人は本当の死の恐怖というものを知っているのだろう。
臆面もない二人の恋愛小説。二人は仲良しで、お互いの長所を褒め合い、甘やかし合う。欠点を長所になるまでお互いを愛でる。栄は極度の乗り物酔いで3駅もたない。自転車でしか移動できない。中央線を出れない。行きつけのバーは西荻窪、慈雨の花屋も吉祥寺、三鷹で進行していく。コピーの通り「恋は中央線でしろ!!」決してお洒落ではない、子供帰りのようなキュートな恋。なんていうかVIVA!40代!と言う言葉がぴったり来る。ベッドタイムアイズのような緊迫した密度の濃い世界ではなく、ちょっと肩の力を抜いた柔らかな感じがする。いつからか、多分『A2Z』の頃からだと思うけど、詠美さんの作品は丸みを帯びてきたような気がする。
ところどころ古今東西の恋愛小説から山田詠美選の名文が引用されている。その引用が慈雨と栄の物語と韻を踏んでいるのだ。山田詠美の審美眼と批評性が技巧を凝らして、いかんなく発揮されている。
栄は犬、猫にもなめられてしまうタイプの天然記念物級の穏やかで優しい人物だが、最後クライマックスで大爆発する。ぐっと来ます。
しょんぼりしがちな大人に「私はあなた達をしょんぼりさせませんよ」と言い放ってくれる山田詠美節の利いた作品です。
TB:螺子を巻く。さん
juice78さん



この一貫性!
共感と反発が綯い交ぜになった複雑な読後感









