120% coool 山田詠美
| 120% coool (幻冬舎文庫) | |
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100%の完璧な快楽では、愛という陳腐な言葉が入り込む。それを打ち消すには、もう20%を必要とする。あなたの恋を誰もが考える恋に引き下げてはいけない。山田詠美が新しく書いた、9つの愛の真理。
また山田詠美を読み返してしまった。怠惰で甘い気持に浸るにはうってつけだ。甘ったるくはない。時々はっとさせられる。本当は悲しい。だけど、悲しみを甘く舌で転がすのは、贅沢な快楽だ。
女友達より男友達とばかり過ごしていた時期がある。私と男の子二人、3人でよくつるんでた。その頃は新しい環境に慣れなくて、新しい女の子の友達をつくる勇気がなかなか出なかった。女の子同士はややこしいし、気を遣う。その点男友達は何故か気が楽だった。3人で私の狭いアパートで飲んだくれたり、飲みに行った帰り道の夜の街を歩くのが楽しかった。
「120%coool」を読むといつもあの日々を思い出す。ノスタルジックな友情の思い出を刺激する。と言って、決して美しい友情ではないのだが。端から見ると私たちの関係は、陳腐な三角関係に見えたかもしれない。その通り、陳腐な関係だ。でもそうじゃないとも言いたくなる。けれど、言葉にして説明すれば、結局陳腐になってしまう。もどかしい。小説の引用で誤魔化すことにしよう。
完璧な快楽が100%だとする。でも、そこには、愛という陳腐な言葉が入り込む。それを消すには、もう20%が必要だ。私たちが好んだ空気は、いったい、何で形作られていたのか。
私は2人とも好きだった。彼らもそうだったと思う。まさに「アイ・ラブ・ユー」ではなく、「アイ・ラブ・ユー・ガイズ」。恋だの愛だの。アフェアは重要ではない。けれど、視界に入る脱ぎ捨てられたジーンズ。散らばったスニーカー。それらが織りなす空気が重要だった。
「ねえ、セックスって重大事と思う?」
私が、突然そんなことを口にしたので、三人は一斉に私を見た。ルークが笑って答えた。
「思わない」
残りの二人も同意した。私は続けた。
「じゃ、あの部屋にセックスがあるってのは?」
「すげえ重大」
私が、突然そんなことを口にしたので、三人は一斉に私を見た。ルークが笑って答えた。
「思わない」
残りの二人も同意した。私は続けた。
「じゃ、あの部屋にセックスがあるってのは?」
「すげえ重大」
主人公のアニーとパスカルの距離感が絶妙。アニーは作家志望の女の子で、パスカルは音楽家志望(と思われる)男の子だ。前者は紙とペンを、後者はサックスを持った、ともに旅行者だ。同じ表現者、でもまだなにものにもなっていない。この同種の人間同士が抱える、気恥ずかしさ、見透かされている感が、心をきゅうと、締め付ける。somethingを目指す者の、somethingになる手前の、モラトリアムな後ろめたさ、心許なさ。こういうの、詠美さん上手いなあ。
カミカゼは『跪いて足をお舐め』の忍さんのようなクールなひと。文学的だとも言える。文学的だけれど、決して文学を書く側にはならない。そういう人は、無自覚でいるからこそ文学的なのだ。120%cooolな人はペンを必要としない。何も持たなくても完成している。あとがきの詠美さんの言葉を借りるなら、20%モアを求めて右往左往するのが物書きなんだろう。
世の中に2種類の人間がいるとするならば。なにかを持つ人間と持たない人間。旅をする人種とそうでない人種。私はと言えばどちらでもなく、100%にも満たない中途半端な人間だ。けれど120%cooolを見定める目は持ちたいと思う。
余談:*この本のあとがきにでてくるバイク便の男の子から詠美さんの許へ、出版後手紙があったらしい。うーん、ほんとにクールだ。
*カミカゼっていうカクテル、飲んでみたことあるが、かなりきつい。でもああいうの好き。甘いカクテルが苦手なので。
*この本は幻冬舎が設立時1994年最初に出版した6冊のひとつ。(他は、五木寛之著『みみずくの散歩』北方謙三著『約束』篠山紀信著『少女革命』吉本ばなな著『マリカの永い夜/パリ夢日記』)見城徹さんに付いて、石原正康さんが角川書店を辞めたとき、その場で角川の連載は断って、幻冬舎で第一作を出すことを約束したそう。熱い!
TB:山田詠美の「100%COOOL」を読んだ!|とんとん・にっきさん













