ケータイ小説に見る関係性のない物語 共感の脊髄反射化

2008/01/12 [土] 16:31 このエントリーを含むはてなブックマーク
以前書いたエントリ ケータイ小説のリアリティ /恋空のソーシャルなリアル感の続きでもあります。
ダ・ヴィンチの宮台氏の文章が面白かったので、ちょっと考えてみます。
MIYADAI.com Blog:昨年の映画を総括しました〔一部すでにアップした文章と重なりますが…)
携帯小説の編集者によれば、情景描写や関係性描写を省かないと、若い読者が「自分が拒絶された」と感じるらしいんです。情緒的な機微が描かれていない作品、単なるプロットやあらすじの如き作品が望まれる。「文脈に依存するもの」を語らず、「脊髄反射的なもの」だけを描く作品です。

これは、従来の本読みが,ケータイ小説を理解できないのも当然ですね。普通小説を読んで、感動したり共感するのは、共通前提に基づいた人間の関係性における機微やそのずれのせつなさだと思う。まず、ケータイ小説読者世代にはその共通前提がないのだという。

先生はにこにこしながら「昨日の葡萄はおいしかつたの。」と問われました。僕は顔を真っ赤にして「ええ」と白状するより仕方がありませんでした。(中略) それにしても僕の大好きなあのいい先生はどこにいかれたでせう。もう二度とは遇えないと知りながら、僕は今でもあの先生がいたらなあと思います。秋になると葡萄の房は紫色に色づいて美しく粉をふきますけれども、それを受けた大理石のやうな白い美しい手はどこにも見つかりません。

何故突然「一房の葡萄」(有島武郎)が出てくるのかと言えば、ただ単に私が昨日の夜寝る前に読見返して感動したからなのですが。例えばこの最後の文章を読んで、せつない余韻に浸れるのは、その作品によって心の栓が抜かれ、極めて個人的な感傷を呼び覚まされるからだと思う。つまり個々人の感動は千差万別であるのに、それを引き出すトリガーは普遍的でなければならない。


そしてそれはやはり時間がかかる。ああ、あの時の私は悲しかったのだ、幸せだったのだと気づくには時間による醸造が必要だ。過去の時点とも違う、今、この瞬間の自分だけが感じる思い。それをデジャヴのように再体験することが、小説を読む醍醐味だと私は感じている。


共感して感動するのは同じなのだけれど、ケータイ小説世代とは(というくくりがあるとするならば)その共感する「現実」が違う。簡単に言うと、「経験不足」「経験値が低い」ということになる。ハレを知らないというか、濃密なものに免疫がない。でもこれは変化する、成長する余地があるということでもある。というかそう良い方に解釈しておきたい。


ところで面白いのがダ・ヴィンチの宮台真司氏の連載オン・ザ・ブリッジ

ダ・ヴィンチ2008年2月号:「近い者が勝つ」過去を舞台に「遠い者が勝つ」という昨今の意味論を持ち込むインチキ・ノスタルジー映画の典型を『Always 続・三丁目の夕日』に見出す

M2Jpop批評(TBSラジオ)のオンエアは1月4日。予告編的な文章を書きました

実際、第二世代以降になると、単なる一時的関係を超えて、十歳も二十歳も離れた彼氏を持つ女子高生らが増えた。むろん彼氏の多くは妻子持ち。倫理的な意味では対称的関係とは言えない。だが注目すべきは、それでもなおそういう彼氏を持ちたがる少女が増えていることだ。

私は年齢的には第二世代以降で、まさにその分析のとおり20以上年上の人と付き合っていた経験があるが(笑)(別に援助交際ではない)それは遠いからだったのだろうか。確かにそれまで知らなかった濃密さを教えられたというのはあったと思う。でも恋愛関係に持ち込んだのはむしろ私の方だし、互いの体に先に抜け駆けをしたのも私の方だった。だって流石にいい歳の男が若い女の子を口説くのは抵抗あったと思う。だから口説いたのは私だ、そして終わらせたのも私。私の場合、結局「遠さ」は「近さ」に負けた。なかなか会えない年上の彼より、身近な同年代の男の子を選んだ。側にいてくれる存在が必要だった。抽象的な愛よりも、今目の前で触れられる手の方が重要。なんという自分本位。でも私は格好悪いところは近い人にしかみせられない。「遠い存在」の年上の彼には、本当に格好悪いところは見せられず、無理して気取っていた。だから、「近い者」に負けた。そこが


■相手に秘密を喋ることもできず、ゆえに程なく「間がもたなく」なる中高生の少女らにとって、相手に秘密を喋って悩みを共有して貰うことができ、なおかつオンデマンドで必要なときにだけ呼び出せる「遠い者」が、近い彼氏がいるがゆえにこそ勝利するのは、当り前なのだ

という少女たちとはちょっと違う。なんとなくわかるけどね。でも私の世代ではそこまで監視社会的ではなかった。今の子は総じて大人しいこが多いと思うが、それはその友人関係における不自由さにも起因しているのかもしれない。


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