『子どもの図書館』 石井桃子/石井桃子さんのリズム
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『子どもの図書館』(石井桃子著・岩波新書)1965年初版の1975年12刷のものだ。
この本は、石井さんがご自宅で開かれていた子どもの図書館、「かつら文庫」の経過を綴ったもの。それに加えて石井さんの児童文学に対する真摯な考えが語られる。
と『ちびくろ・さんぼ』がいかに子どもたちに支持され、子どもの物語になにが必要なのか教えてくれる名著なのだと絶賛されている。いわゆる「一斉絶版問題」は1988年以降なのでこの本では触れられていない。海外でも差別的だと言われ出したのは、1970年代以降。 ちびくろサンボ - Wikipedia
私の家には小さい頃にこの絵本があって、読んだ記憶があるが、ちょうどぎりぎり手に入った世代のようだ。とらがバターになるところ、そしてそれを「ほっとけーきをつくってばんごはんにたべましょう。」と「おかあさんのまんぼは、二十七まいたべ、おとうさんのじゃんぼは、五十五まいたべましたが、ちびくろ・さんぼは、百六十九まいたべました」というところが大好きで何度も何度も読んだ。百六十九まいってところがいい。なぜその数字なんだ?と思うけれどなんだかリアリティがあって納得させられる。
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児童文学者で『くまのプーさん』などの翻訳で知られる石井桃子さんが2008年4月2日亡くなられた。
今私の手元には古い岩波新書がある。
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『子どもの図書館』(石井桃子著・岩波新書)1965年初版の1975年12刷のものだ。
この本は、石井さんがご自宅で開かれていた子どもの図書館、「かつら文庫」の経過を綴ったもの。それに加えて石井さんの児童文学に対する真摯な考えが語られる。
1,2章では子ども達との本をめぐる直の触れ合いが、3章では子どもの本についての石井さんの考察が書かれている。その中で、まっすぐで潔い子どもに対する眼差しにはっとさせられた。現在絶版で手に入りにくいようなので、いくつか引用して紹介したいと思う。
子どもが、本(文学)の世界にはいって得る利益は、大きく分けて二つあると思います。一つはそこから得た物の考え方によって、将来、複雑な社会でりっぱに生きてゆかれるようになること、それからもう一つは、育ってゆくそれぞれの段階で、心の中でたのしい世界を経験しながら大きくなってゆかれることです。
ところが、現代の子どもは、現代に生きてはいても、まだ何年も生きていません。経験もつんでいません。そこで、昔、昔話を伝えた文字を知らない人たちとおなじように、抽象概念の少ない世界に生きています。(抽象概念は、経験や文字が、私たちに与えてくれるものです。)そこで、そういう人たちのためのお話は、だれがどう思ったかとうことではなく、だれが、どうしたかでなければなりません。つまり、語られることは形になり、それが動いていなければなりません。昔話をみてください。みなそうなっています。
子どもは形の世界、絵の世界に住んでいる。そこから文字の世界へむりなくたのしく入らせるにはどうしたらいいか。これは大変示唆に富んだ、スリリングな問いであると思う。文字を発明する以前の人間の世界と、この抽象化以前の子どもの世界には通じるところがある。文字による世界の支配は、私たちの世界を発達させ複雑化したが、それはどこか「脅威的」な押しつけであったのは間違いない。
またこの3章では『ちびくろ・さんぼ』の子ども達の反応に関する素晴らしい記述がある。
このように、『ちびくろ・さんぼ』の値打ちは、おとなにはながいあいだわからなかったのですが、子どもには、一ぺん読めば、わかることだったのです。そして、毎年、いれかわり、たちかわり、この本をおもしろがることによって、子どもたちは、この世から消えていかないように守ったのです。(略)子どもたちが、ことばでは知らせることのできない、自分たちの心の秘密を、おとなにたちに知らせたということです。
と『ちびくろ・さんぼ』がいかに子どもたちに支持され、子どもの物語になにが必要なのか教えてくれる名著なのだと絶賛されている。いわゆる「一斉絶版問題」は1988年以降なのでこの本では触れられていない。海外でも差別的だと言われ出したのは、1970年代以降。 ちびくろサンボ - Wikipedia
私の家には小さい頃にこの絵本があって、読んだ記憶があるが、ちょうどぎりぎり手に入った世代のようだ。とらがバターになるところ、そしてそれを「ほっとけーきをつくってばんごはんにたべましょう。」と「おかあさんのまんぼは、二十七まいたべ、おとうさんのじゃんぼは、五十五まいたべましたが、ちびくろ・さんぼは、百六十九まいたべました」というところが大好きで何度も何度も読んだ。百六十九まいってところがいい。なぜその数字なんだ?と思うけれどなんだかリアリティがあって納得させられる。
石井さんの文章は、児童文学者らしく、ひらがなが多く、こども向けの平易なものように見える。しかしよく読めばよく読むほど、実は、句読点の打ち方ひとつとっても、深い思慮に裏打ちされた選び抜かれたセンテンスであることわかる。上に引用した文章も、思わず声に出して読みたくなるような、生き生きとしたリズムがある。もう新刊を読むことはできないけれど、石井さんの訳された多くの名作絵本、児童書を通じて、石井さんのリズムは奏でられ続けるだろう。













