あらすじ: 鎌倉の女子高に入学したふみは入学式の日に江ノ電の鎌倉駅で、別のお嬢様女子高に同じく入学した幼馴染『あーちゃん』こと奥平あきらと10年ぶりに再会、ふたりはいっしょに登校するようになる。その頃ふみと交際していた従姉妹が結婚、裏切られた気分になったふみは沈んでいたが文芸部の部室で出会った杉本先輩と付き合いはじめる。(Wikipediaより)
志村貴子さんの作品は『敷居の住人』『ラヴ・バズ』今連載中の『放浪息子』等を読んできました。この『青い花』は話題になっているのは知っていましたがなかなか読む機会がなかったのです。最近やっと読むことができました。この方は放浪息子もそうですが、トランスセクシャルな問題に関心があるんでしょうか。性別に悩む少年少女や、今回は同性愛。セクシャルマイノリティに、何かを感じるんでしょうね。
「百合物」に入るんでしょうが、あんまりそういう感じはなく、切なく、甘い女の子達の揺れ動く感情が繊細に描かれています。きわどいテーマにもかかわらず、いやらしさが、ない。(といってあからさまな性描写はないんだけど)これはすごいことです。
非常に美しい、ほれぼれするような女の子同士のキスシーン。昔の女学校のエスみたいな感じもあって、現代的でありながらどこか古風。
自分の思春期を振り返って、思春期特有の同姓への憧れというものがあったかどうか考えてみたのですが、思い当たる記憶はありませんでした。ただ、小さい頃、年上のきれいなおねえさんに手をつないでもらって嬉しかったこと。その美しい、白い手のひんやりした感触にどきどきしたこと。そういう年上の女性の美しさに憧れたり、大人の女性の女性らしさ、性に惹かれたり、そういう漠然としたものはありまし
た。
こういう高校生が主人公の物語は、同世代の若い子に共感されることが多いと思いますが、私はむしろ大人に向けた物語であると思います。
なぜなら、その時代の真っ直中にいる当事者には見えないものが時が経つことで見えてくるからです。思春期の過ちや、痛み、傷が、時間によって発酵され甘い芳香を放つ。この一巻で印象的な言葉があります。
生まれてはじめての恋だったから私はいつまでもそれにとらわれてしまう
青春時代というのは、一過性のものです。青春だけでなく人生の一瞬一瞬は刹那的なものです。永遠のように思えた「あの頃」。過ぎ去ってもう戻れない。戻れないからからこそ、人は思い出を惜しみ、慈しむ。
「はじめての恋」は彼女を甘く締め付ける纏足。少しずつほどけて自分のものになっていくのを見届けたい、そんな気持を起こさせます。
私は恋愛は自由なので、同性愛でも異性愛でもいいと思うのですが、なかなか世間ではカミングアウトしづらい状況ですよね。キリスト教社会では禁じられてもいますし。この物語ではそういう束縛があるからこそ、秘め事としてより華やぎ、切ない恋と感じられるのかも知れません。本人達は苦しいし、真剣に悩んでいるのですが。ただこの世界ではやたら同性愛にたいする理解者が多く、女子校ではよくあるから、みたいなおおらかさもあってそれで救われる部分もあります。でも女子校では実際よくあるんですかね。
ある意味そこはファンタジーなんでしょうか。
同性愛をテーマにした作品では他に、『LOVE MY LIFE』(やまじえびね)なんかを思い出しました。これも傑作です。
繊細な切ない気持にしてくれる、素敵な作品です。続きを楽しみにしています。
青息吐息:青い花特集