『しかたのない水』井上荒野
| しかたのない水 (新潮文庫 い 79-2) | |
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内容(「BOOK」データベースより)女を傷つけることを何とも思っていない、肉体の美しい男。日常から解き離されることを強く求めているが用心深い人妻。妻が失踪したらしい水泳コーチ。人目を引く魅力的な受付嬢。フィットネスクラブで裸体を晒す一癖も二癖もある現代の男たちと女たち。思わぬ恋の罠に嵌って、激しく翻弄される6人を思いがけない角度から描く、異色連作短編集。
内容(「MARC」データベースより)あの人の肉体が、私の中で泳ぐ-。フィットネスクラブで裸体を晒す一癖も二癖もある現代の男たちと女たち。そこで思わぬ恋の罠に嵌って、激しく翻弄される6人を思いがけない角度から描く、連作短編集。
あるフィットネスクラブを舞台に、そこに集う男女の様々な物語を描いた連作短編集。作品ごとにそれぞれの主人公の視点で語られ、少しずつフレームアウトしていく。
ここに出てくる人々は皆、とげをもっている。自分の人生に対して、世界に対して。はっきり言って嫌な女、嫌な男だらけだ。表面上は人当たり良く、世間体良く繕っていても。しかしながら、一篇読むごとに、この世界の住人のことが気になって気になって仕方がなくなってくる。そしてすっかり、読み終えて、井上さんの小説の奇妙な魅力にはまっている。
この『しかたのない水』で、一番嫌いで、一番好みな人物が「手紙とカルピス」の男だ。こいつが他の連作に絡んでくると、物語が不穏にざわついていく。はっきりいってどうしようもないだめんずで不埒な男だ。しかしながらこういう男が私の好みだし、とても可愛く感じてしまう(笑)まあ、こういうナンパ師はまず間違いなく、将来鬱病になるよ。
そういう弱さが、かわいい。
女を誘うとき、この男はいつも終わりを見てしまう。後悔ととさっさとやってまえという苛立ち。つかの間の満足感と安定、と同時にそれを壊したくなる衝動。このアンビバレントな欲望にだらだらと忠実な人生。
「自分の胸元にぴたっと人差し指を押しつける仕草を見て、俺はたちまち後悔する。こんな女のいったいどこがいいんだろう、と。」
どうしようもないひどい男だが、この感性には共感せざるを得ない。私もまた終わりを見るタイプだ。
終わりを見透かしながらも、さまよい続け、日常は続いていく。
井上荒野さんの作品イメージは、私の中では「脂肪分」、だ。バターとかコーヒーのミルクとかクリームとか。とくにそれほど必要でない、余分な嗜好品。江國香織さんがバターを「贅沢の塊」と表現されていたが、まさにそんな感じ。
優雅で野蛮な恋愛小説を読みたかったら、井上荒野作品はうってつけだ。
この作品でもどれも、美しい不穏な悪意に満ちているが、小川洋子さんの悪意が繊細な少女の悪意なら、井上荒野さんの悪意は、大人の女の骨太な悪意だ。
井上さんの『ベーコン』が先の直木賞でノミネートされたとき、ふと直木賞?と思ったが、こうしてみると、なるほど確かに直木賞作家の側だと思う。きっちり完成度の高い恋愛小説を提供している。買って損がない作品揃い。私が一番最初に読んだのは『もう切るわ』だったが、あれは確か江國さんがどこかで誉められていたからだったような。
江國さん好きならまず、ハズレなし、ストライクゾーンだと思う。といってよくある江國さんの二番煎じではないのでご安心を。
TB:しかたのない水 / 井上荒野|書庫 〜30代、女の本棚〜
まっしろな気持ち: しかたのない水
そういう弱さが、かわいい。
女を誘うとき、この男はいつも終わりを見てしまう。後悔ととさっさとやってまえという苛立ち。つかの間の満足感と安定、と同時にそれを壊したくなる衝動。このアンビバレントな欲望にだらだらと忠実な人生。
「自分の胸元にぴたっと人差し指を押しつける仕草を見て、俺はたちまち後悔する。こんな女のいったいどこがいいんだろう、と。」
どうしようもないひどい男だが、この感性には共感せざるを得ない。私もまた終わりを見るタイプだ。
終わりを見透かしながらも、さまよい続け、日常は続いていく。
井上荒野さんの作品イメージは、私の中では「脂肪分」、だ。バターとかコーヒーのミルクとかクリームとか。とくにそれほど必要でない、余分な嗜好品。江國香織さんがバターを「贅沢の塊」と表現されていたが、まさにそんな感じ。
優雅で野蛮な恋愛小説を読みたかったら、井上荒野作品はうってつけだ。
この作品でもどれも、美しい不穏な悪意に満ちているが、小川洋子さんの悪意が繊細な少女の悪意なら、井上荒野さんの悪意は、大人の女の骨太な悪意だ。
井上さんの『ベーコン』が先の直木賞でノミネートされたとき、ふと直木賞?と思ったが、こうしてみると、なるほど確かに直木賞作家の側だと思う。きっちり完成度の高い恋愛小説を提供している。買って損がない作品揃い。私が一番最初に読んだのは『もう切るわ』だったが、あれは確か江國さんがどこかで誉められていたからだったような。
江國さん好きならまず、ハズレなし、ストライクゾーンだと思う。といってよくある江國さんの二番煎じではないのでご安心を。
TB:しかたのない水 / 井上荒野|書庫 〜30代、女の本棚〜
まっしろな気持ち: しかたのない水












